2006年12月10日

Jの入れ替え戦に思う

こんにちは。

今回は昨日行われた福岡vs神戸の入れ替え戦を見て、それについて思うところのコラムです。

この日は小雨交じりの博多の森球技場。初戦を0−0で終えた両チームだが、今回から採用された「アウェーゴール方式」により、福岡には失点が非常に怖い状況。

「この雨がどう影響するんだろう?」

そう思いながら開門を待っていた。

開場の時間になり、スタジアムの中へ・・・そこで見た様子はロッソのホームの試合のような和気あいあいとした雰囲気など微塵も無い、ある種の悲壮感が漂うものだった。

「絶対に勝ちたい」

すれ違う福岡サポーターの面々は、そういったオーラを余すことなく醸し出していた。

そしてキックオフ。

前半は両チームとも攻撃に全く人数を掛けず、「とにかく失点しない」という気持ち、ゲームプランがひしひしと感じられた。FWが献身的なプレスを掛け、そこから出てくるボールに対しては容赦なく当たりに行く。福岡は4−4−2。神戸は4−3−3。お互いの良さを消しあう我慢比べのような展開が続く。

両サイドバックが上がる気配も無ければ、ボランチが前線に飛び出す事も無く・・・いわば予定調和のように0−0で前半を終える。

そして後半。
両サポーターの声援はさらにヒートアップしていくものの、ゲームは我慢比べが続いていた。共に激しいプレッシャーの中、非常にシンプルだが一発勝負におけるセオリーを徹底していたと言える。

その均衡を破ったのは神戸。
後半15分くらいだったろうか。神戸のFWがクロスに合わせようとゴール前ニアサイドに走りこむ。右から放たれた低いクロスはその動きに釣られた福岡のDFラインの前のスペースへと流れて来た。そこに左後方から飛び込んだ選手がシュート!
福岡のDFとタッチの差で速かったシュートはGKの手を弾いてゴール。神戸にとっては「2点」の価値を持つ、大きな大きな先制点。アウェーゴール裏のサポーターの絶叫が響いた。

対する福岡にとっては、致命的な失点・・・
アウェーゴール方式である為、J1残留の為には「2点を取って勝つ」必要が生じたのだ。

当然これまでの我慢比べは終わった。全く別の試合かのように、福岡は攻撃的に。神戸は更に守備的にとスタイルを変える。福岡は左サイドの古賀を基点にクロスから再三チャンスを作る。古賀は相手右サイドバックの北本にほぼマンマークで付かれていながら、角度を変え、曲がりの強弱を付ける多彩なキックでゴール前にクロスを上げてくる。これには恐れ入った。
そのクロスに対して2TOPが中で待ち受け、右サイドのMF、ボランチの一人がゴール前に飛び込み、触ればゴールというシーンを3度、4度と作るのだが、これも本当に数センチという差でボールに届かず・・・

この形が唯一実ったのが、同点弾となる。しかしこの時既に残り時間は10分も無かった。両サイドバックがひたすら押し上げ、ますます攻勢を仕掛ける福岡とそれをひたすら耐える神戸。

神戸のクリアミスから、ゴール前の混戦となり、ボールがゴールラインを割ったと思われるシーンがあった。「福岡やりやがった!!!」と心の中で叫んだが、ゴールは認められず。こぼれたボールを福岡が取り、そのままプレーを続行した為、アピールする機会もないままに試合は進んだ。

余談だが、神戸の朴が交代を告げられた際、なんとピッチ内で靴紐を結び直し始めた。当然審判に注意され、警告を貰うもその行為を続け・・・それからまさに「チンタラ」と歩き始める。福岡の選手に激しく背中を押され、罵倒されながらもふてぶてしくピッチを後にした。

ロッソの試合でこれをやられてたら、発狂ものだった(笑)

それでも、「勝ちに拘るプロ意識」とはここまで凄いものなのかとある意味感心してしまった。

そしてロスタイムを戦い・・・福岡にとっては無情の、神戸にとっては歓喜のホイッスルが鳴った。



この戦いの背景を少し。

福岡は、シーズン途中に成績不振を理由に監督を交代させた。皮肉な事にこの日の相手、神戸の松田監督はこの解任された人物である。
この松田監督は、「組織的な守備の構築」に掛けては高い評価を受けていた。「問題はFW」サポーターを初めとする多くのアビスパを見てきた人間にはそう見えていたにも関わらず、フロントはその成績不振を監督の問題と判断したのだ。

結果論かもしれないが、松田監督の築いた「組織的な守備」を崩せずにJ2に降格となったという事実。

これはサポーターにとって、非常にやり切れなかったことだろう・・・



この日、試合後のピッチでは終了後のセレモニーが行われた。

まずはフロントの社長の挨拶。

「非常に残念な結果になりましたが・・・」
という話の途中でスタジアム全体に大きなブーイングが鳴り響いた。



そして監督の挨拶。

「私は福岡のJ1残留の為に呼ばれて来ました。しかし、このような結果に終わり、多くのサポーター、関係者の期待を裏切ってしまいました。このような結果に終わった事は、全て私の能力の無さが原因であり、私の責任です。本当に申し訳ありませんでした。(そういって四方の客席にそれぞれ深々と頭を下げた)」

ここでは満場の・・・とは言えないまでも、ブーイングはまばら。無言が半分、拍手が半分というところ。

ちなみに入れ替え戦の前から、「辞任」の意志を表明していた事も付け加えておく。


そして選手の代表挨拶。

結びの言葉は「すみませんでした!」

この日の試合を見ていたもので、選手を批判するものは一人も居ないだろう。少なくとも「勝ちたい気持ち」は充分過ぎるほどに見ている人には伝わってきたから。

もちろんほとんどの人が拍手を送っていた。



現在、ロッソの今後について多くの意見(誹謗中傷含む)が飛び交う中、様々な考えの人が居て、そのそれぞれに「強い失望感」が漂っている気がします。

今回、この入れ替え戦についての記事を書いたのは、「プロとは何か?」を考える上で大きく参考になるだろうと考えたから。

プロは結果が全てであり、その事をロッソを取り巻く人々全てが理解しない限り、Jリーグへの仲間入りは出来ないと思うのです。

選手のプレーにも通じますが、失敗してもいいんです。それを今後にどう生かすか?その為に、これからのロッソを取り巻く全ての人に必要なものはそれぞれの「責任感」なのでしょう。

福岡の川勝監督の挨拶を聞きながら、ある悔しさとある気持ちよさを同時に感じ、込み上げる涙を必至にこらえた管理人でした。
posted by Yama at 14:48| 熊本 ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
入替戦は速報観戦でしたが、やはり神戸の綿密な作戦勝ちで終わりましたね。福岡は視察不足とかアウェーゴールの重大さがチーム内でおざなりになっていた様ですね(スポーツ新聞で見ただけですが)。やはり「プロたるものは何ぞや」、と考えさせられた試合でもありました。所詮人間だから良い時も悪いときもある、しかしどんなときも観客を満足させるようなプロ意識を監督とフロントに望みます。
Posted by ゆうひのパパ at 2006年12月10日 21:42
お疲れ様でした。
何とか会えて運命を感じました(*^3^*)笑

いや、実際は笑ってられませんよ。まぢで。
北斗はケガさせられたのに『(ケガした)自分にも責任がある。監督だけの責任じゃない』とコメントしてました。北斗…

相手がアビスパを知り尽くしてる松田さんってのも致命的。雨も致命的。
1点の重みに何度も泣かされた1年でした(T_T)

両チーム、来年は"昇格"に向けての1年になりますね!
では、またお会いしましょっ♪
Posted by ひすい at 2006年12月11日 02:48
>ゆうひのパパさん
こんにちは。いろいろと感じるものが多い一戦だったのは間違いないですね。

プロ意識とはシビアなものですが、だからこそ人間性が顕著に現れる部分なのでしょう。

それが見る人に感動を与えるスパイスになってるとも言えます。


>ひすいさん
運命というか、「やっぱり?」って感じだった(笑)

北斗は悔しかっただろうね・・・特にこの試合も右サイドが物足りない感じだったから。そう言えば、ひすいちゃんには前に「松田監督解任は間違い」って話してたような・・・

本当にそうなってしまったね(汗)

またどこぞでお会いしましょう。(笑)
Posted by kimitaro at 2006年12月11日 11:33
kimitaro氏》
スパサカでのインタビューで…


『J1に上がった時から、覚悟(降格の)はしていた…』


とコメントした北斗にプロ意識を感じたんは、自分だけでっしゃろか?
(´〜`;)


もし北斗の怪我が無く、試合に出れとったら?
と、そるばっか考えとったですばい…。
(。。;)
Posted by ツッタカ坊や at 2006年12月12日 18:52
入れ替え戦はTV観戦しました。
アビスパの古賀がどうしてあんなに易々と
相手DFをかわして何度もクロスを上げることが
できたのか?
どうして神戸松田監督はアビスパの左サイドの
攻撃力を知り尽くしているはずなのに
手を打てなかったのか不思議です。
kimitaroさんのお考えを教えてください。
Posted by けい at 2006年12月12日 23:04
>ツッタカ坊やさん
北斗が出ていたら・・・それで勝てたか?は別にして、もっと優位に試合を進められた事は間違いないでしょう。

それの影響からか、本来ボランチの城後をFW、FWの田中を右サイドに使ってましたから。

この付け焼刃が通じない事は、ロッソを見てる人には充分おわかりかと。(^^;


>けいさん
あくまでも個人的な考えですが・・・
松田監督は古賀の怖さを充分理解していたと思います。手を打てなかったのではなく、手を打っていてもあれだけクロスを上げられたとの見解です。

古賀の素晴らしさは「キックの多彩さ」に尽きます。ボールにカーブを掛けるにしてもその曲げる幅をコントロール出来ます。

だから、相手(北本)からすれば「きっちりマークしている」つもりでも、自分の体の内側と外側の両方から通されるので非常に困っていたように見えました。

シーズン中の対戦があり、慣れていればもう少し距離を詰める、癖を読むなどの対応が出来たかもしれませんが・・・

Posted by kimitaro at 2006年12月13日 01:01
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